2018年度前期 開講講座
5月12日(土) 午後1時~
《「明治150年」の歴史を問い直す!》
テーマ
 日本のナショナリズムと近現代
── 梅田正己さん(高文研刊『日本ナショナリズムの歴史』著者)に聞く
ゲスト=梅田正己(高文研・前代表、書籍編集者、歴史研究者)
聞き手=渥美 博(編集者、『封殺されたもうひとつの近代』著者)
 政府・マスコミをあげての「栄光の明治・150年」の祝祭(偽りの150年の顕彰)が企てられている。わたしたちはこの150年の歴史を問い直すことを抜きに、真の人民・労働者階級になること、そしてアジアの人民と連帯することはできない。

1、沖縄の基地問題・天皇代替わりから憲法を考える
 戦後日本の形成において、憲法9条と天皇(制)そして沖縄はトライアングルの関係にあった。1947年に天皇ヒロヒトがGHQに送った、琉球諸島の軍事占領の継続をアメリカに望む「沖縄メッセージ」は、このトライアングルの関係を端的にあらわしている。この基本形は憲法施行71 年を経たこんにちも変わらない。このトライアングルの関係を打ちこわし、真に人民が生きる道を探る。
①5月19日(土) いま、沖縄で起こっていること
 講師=滝本 匠(『琉球新報』記者)
②9月1日(土) 天皇代替わり儀礼の違憲性
 ──「前例」踏襲で覆い隠される歴史の真実
 講師=山下勇男(社会主義理論研究)
 代替わりは2019年4月30日から5月1日にかけてと決まった。政府は「前例」を盾に主だった儀式を「国事行為」として扱うつもりである。ならば、わたし
たちの批判は、その「前例」なるものの検証から始めなければならない。

2、日本のナショナリズムと近現代
── 梅田正己著『日本ナショナリズムの歴史』(全4巻)をテキストに
Ⅰ「神国思想」の展開と明治維新
Ⅱ「神権天皇制」の確立と帝国主義への道
Ⅲ「神話史観」の全面展開と軍国主義
Ⅳ 国家主義の復活から自民党改憲草案まで

 世話人=渥美 博(編集者)/土松克典(韓国労働運動研究)
 現天皇を支持、または好感をもつものが「国民」の7~8割、朝鮮を「脅威」に感じるものが8割に達する状況が出現している。日本ナショナリズム・軍国主義の崩壊を経てなおこうした状況にあるのは、支配階層のたゆみない思想攻撃による。同時にそれは、人民の闘いの不全、敗北をも物語る。
 こうした歴史をみずから直視し、検証することなしには、真に人民の未来は切り開けない。
 そのための素材として『日本ナショナリズムの歴史』全4巻(高文研刊、2017年10月)をテキストに1年を通じて考えてゆきたい。
①5月12日(土) 開講講座
 梅田正己さんに『日本ナショナリズムの歴史』執筆の意図を聞く
 聞き手=渥美 博(編集者)
②6月2日(土) 『日本ナショナリズムの歴史』第Ⅰ巻を読む(その1)
 ── 第Ⅰ章「日本ナショナリズムの源流」~
    第Ⅱ章「国学と水戸学にみる初期ナショナリズム」まで
③6月30日(土) 『日本ナショナリズムの歴史』第Ⅰ巻を読む(その2)
 ── 第Ⅲ章「日本史の中の天皇制」~
    第Ⅳ章「幕末の動乱と天皇(制)復権への道程」まで
④7月14日(土) 『日本ナショナリズムの歴史』第Ⅱ巻を読む(その1)
 ── 第Ⅴ章「近代天皇制国家の構築とナショナリズム」まで
⑤8月25日(土) 『日本ナショナリズムの歴史』第Ⅱ巻を読む(その2)
 ── 第Ⅵ章「福沢諭吉にみるナショナリズム形成の軌跡」まで
⑥9月22日(土) 『日本ナショナリズムの歴史』第Ⅰ巻・第Ⅱ巻の各報告者が 梅田正己さんに聞く
※②~⑤の報告は受講生が担当して行ないます。第Ⅲ巻~第Ⅳ巻はHOWS2018後期講座(2018年11月~ 2019年3月)に実施します。

3、階級意識を鍛え、労働運動再建の一翼を担おう!
 この春、東京の新成人の8人にひとりが外国籍であったと報道された。わたしたちの想像を超えて「国際化」は進行し、多くの外国人労働者が労働法規制の枠外に置かれ搾取と人権侵害に苦しんでいる。もちろん、不当な首切り合理化を躊躇しない点で、資本に国籍の違いはない。背後にあるのは、利潤を極大化しようという資本の飽くなき衝動である。今こそ、科学的な社会認識をわがものとし、労働者としての階級意識を鍛え、職場で、地域で、運動の強化・再建の一翼を担おう。
①6月16日(土) 生活権と労働権を取り戻すために
 ── ユナイテッド争議団の闘いから
 報告=吉良紀子(全国一般・全労働者組合FAユナイテッド分会)
②7月7日(土) 外国人労働者のいま
 ── 技能実習生の問題を中心に
 講師=佐々木史朗(全統一労働組合書記長)
③ 〈夏季セミナー〉 労働者と学習活動(7月28日~ 30日 箱根湯本で)
 ── 労働者の哲学を確立するために
 講師=宮川敏一(京成労組元書記長)
④9月8日(土) 『コンビニの秘密──便利で快適な暮らしの裏で』
 (2017年、39分 監督=土屋トカチ)
 ゲスト=土屋トカチ(映像グループ ローポジション/映画監督)

4.国際的視野を培うために
 資本主義体制は日本のみならず全世界で末期的な症状を露呈している。しかし支配層はマスメディアを駆使し、その危機をすべて人民の肩に転嫁し、ナショナリズムで人びとの階級意識を麻痺させようとしている。わたしたちに必要なのは具体的な事実を伝えることであり、インターナショナリズムに基づく透徹した視点で日本を、そして世界を見ていくことである。
①6月9日(土) 第19回世界青年学生祭典(2017年10月13日~ 22日 於:ソチ)   に参加して
 報告=近藤和樹(日本社会主義青年同盟委員長)
 聞き手=米丸かさね(編集者)
②7月21日(土) 現代の帝国主義
 講師=鎌倉孝夫(埼玉大学名誉教授)
③8月18日(土) 現代世界の変容と国際秩序の再編成
 ── 米日帝国主義の衰退、BRICS台頭の意味
 講師=富山栄子(国際交流平和フォーラム)
    山下勇男(社会主義理論研究)
 ※ 中国共産党第19回全国代表大会も内容に含めて
  世界はいま歴史的な構造変化の只中にある。それはわたしたちの観念と思考の 枠組みそのものの転換を迫っている。全般的な見取図と見通しを富山が、中国の 台頭を中心に山下が問題提起する。
④9月5日(水) こんにちの国際共産主義運動
 ── 共産党労働者党国際会議にみる共同行動の前進と論点から
 講師=沖江和博(国際政治研究)

5、メディアを疑う視点
 講師=山口正紀(ジャーナリスト)
 わたしたちは、日々生起する世界の出来事をマスメディアの報道を通じて知り、考える。そして、多くの人は、「報道されたこと」を事実と信じて疑わない。それが世論を形成し、政治も左右する。
 今、日本で戦後最悪の政権が5年以上も続く大きな要因の一つが、安倍政権に支配され、迎合するマスメディアの報道にある。この状態を覆すには、市民が「メディアを疑う視点」を持つことが不可欠だ。
 毎回3~4人の参加者に、気になった報道について発言してもらい、新聞記者、「人権と報道・連絡会」メンバーとして、マスメディアのあり方を考えてきた山口正紀さんの経験から、具体的な報道テーマの検証を通じ、「メディアを疑う視点」を参加者と共有したい。
①5月30日(水) 
②7月4日(水) 
③〈夏季セミナー〉
(7月28日~ 30日 箱根湯本で)
④8月29日(水) 
⑤9月29日(土) 


6、世界の短編小説を読む
 講師=立野正裕(元明治大学教員)
 あなたの前に文学の扉はひらかれる、さながら「注文の多い料理店」の扉のように。
 今期は20世紀前半期のイギリス文学を特集する。二度の大戦の予感と経験を踏まえ、多くの忘れがたい秀作を生み出した20世紀イギリス文学。今期取り上げる四つの短編もそうである。直接時局を扱っていなくとも、この時代の根底をなす不安や来るべきものへの予感を描き出している。一世紀を経ていよいよそれらはこの時代をまざまざと照らし出すかのようだ。
(各回とも午後6時30分~9時)
①5月23日(水) ダフネ・デュ・モーリァ作「モンテ・ヴェリタ」
 (『鳥』収録、創元推理文庫)
②6月27日(水) キャサリン・マンスフィールド作『園遊会』(ちくま文庫)
③8月22日(水) イヴリン・ウォー作「ディケンズを愛した男」
 (『街角の書店』所收、創元推理文庫)
④9月26日(水) デイヴィッド・ガーネット作『狐になった奥さん』
 (岩波文庫)