朝鮮学校「高校無償化」の実現を! 大阪での勝利を全国の勝利へ!
朝鮮学校攻撃も〝制裁〞の一側面

李春熙(東京朝鮮中高級学校「高校無償化」弁護団)

 八月五日のHOWS講座で、弁護士の李春熙さんが「在日朝鮮人からみた経済制裁の一〇年」と題して講演された。そのなかから朝鮮学校「高校無償化」問題に関する部分を抜粋し掲載する。 【編集部】

 広島および大阪地裁での朝鮮学校「高校無償化」問題の判決を受け、この問題の本質の一面として、朝鮮学校攻撃とは〝制裁〟としての側面を持っているというとらえ方が必要だと思う。政府・自治体による朝鮮学校攻撃は、表面上は朝鮮学校の運営実態等を問題にしているが、実際は朝鮮民主主義人民共和国に対する拉致や核・ミサイル問題への圧力という政治・外交上の目的、すなわち〝制裁目的〟にもとづいて行なわれている。
 しかし、朝鮮学校を攻撃することは、制裁目的の実現とは何ら合理的関連性がない。広島地裁判決は、問題を政府の「裁量」問題に矮小化する不当なものだ。
 二〇一〇年以降、地方自治体の補助金廃止・削減の動きが広がっている。表向き制裁とは言わないが、「市民の理解が得られない」など、結局のところ拉致や核といった朝鮮政府の行動を理由としている。
 〝制裁の時代〟の在日朝鮮人攻撃だと言える。
 こうした不当な制裁は、日本の法制度が行政権に広い裁量を与えフリーハンドを認めてしまっているところから生まれている。大阪地裁判決はその問題への危惧に基づくものと思う。判決は「下村文科大臣は、朝鮮学校に支給法を適用することは北朝鮮との間の拉致問題の解決の妨げになり、国民の理解が得られないという外交的、政治的意見に基づき、朝鮮高級学校を支給法の適用対象から除外」したと認定した上で、「後期中等教育段階の教育の機会均等の確保とは無関係な外交的、政治的判断」であり、朝鮮学校の「無償化」排除を違法・無効とした。教育の機会均等に資するという無償化法の趣旨・目的から明らかに逸脱していると断じ、法治主義に反する事実上の制裁としての在日朝鮮人攻撃を批判したものだ。この判決は、拉致問題のためだったら権力を好き放題使っていいのではないのだと、在日朝鮮人に対する人権侵害全般に応用できる考え方を示した。

(『思想運動』1006号 2017年8月1日-15日号)